7月26日(月)放送
7月27日(火)放送
7月28日(水)放送
7月29日(木)放送



『人材流動性に向けての課題』


<人材の流動化が進まない日本>
山本 人材派遣は、人材流動化、就労形態の自由化などに向けてのひとつの切り札です。人材の流動化は、日本の企業にとって、非常に根本的な問題なんですね。 最近の産業競争力の強化に向けても、人材の流動化は大きな課題となっています。
佐中 なぜ、このような状況になったのでしょうか。
山本 それは、日本の社会システムそのものが問題なんですね。日本は、基本的に終身雇用が前提となっているため、なかなか流動化が進まないんですね。
佐中 大企業に就職すれば、人生安泰という感じでしたからね。いまでもそういう考え方の人が、結構いるように思いますけどね。
山本 だから、企業が危なくなったときのリストラは終身雇用を前提として働いてきた労働者にとっては死活問題にもなりかねません。現在は、終身雇用から流動化に向けての過渡期であるため、特に問題が深刻化する可能性があります。
佐中 日本は、技術のようなソフトの部分は優秀なのに、社会システム、社会構造といったハードの部分で問題を抱えることが多い印象ですね。人材の流動性に関しても世界から遅れをとっているんでしょうか?
山本 いやそうでもなくて、世界と比較してみると、日本が他国に比較して人材の流動性が極端に低いわけではないんです。OECDのデータを見ても、世界的に見てアメリカが特に企業への人材の定着率が悪いだけなんですね。でもそのアメリカはこの人材の流動性が企業競争力の強化につながっているんですけどね。
佐中 好調アメリカ経済を支える要因のひとつなんでしょうね。
山本 半導体の分野を見ても、世界の半導体ランキングに乗っている企業は、例えばアメリカではインテルやマイクロンなど、半導体の時代になって新たに生まれた企業ですが、日本は日立、東芝、NECという昔からの企業、ヨーロッパでもジーメンスやフィリップスなど昔からの老舗の企業なんですよ。やはり、産業競争力の強化を目指すのであれば、企業もアメリカに対抗できるだけのシステムに変わる必要があると思いますね。
佐中 逆にいえば、それができているアメリカの社会は、すごいということなんでしょうね。
山本 そもそも、日本の雇用システムは人材を確保し、定着させることを目的として確立してきたため、人材の流動化を阻止する方向で働いてしまっています。



<退職金制度に問題が>
佐中 その人材の流動性を阻害する要因として働くシステムには、具体的にどのようなものあるのでしょうか。
山本 ひとつは退職金制度です。退職金は勤続年数により有利になるように設計されているため、転職は退職金の面から見て不利になるわけです。また、定年退職に対して自己都合退職は退職金が大幅にカットされてしまいます。
佐中 山本さんの時はどうでしたか
山本 私が前にいた会社は、外資系だったからかもしれませんが、周囲に比べると少し多かったと思います。当時から早期退職制度でもあれば、もっとよかったかもしれません。松下などは、昨年の新人から退職金の分を全額給与に上乗せして受け取れることも選択できるようにしました。しかし、今の税制では退職金の需給の際には所得税の控除があるのに対し、賃金に上乗せされると、この適用が受けられません。でも松下の場合はこの税金分を会社が負担してさらに上乗せして支払っているそうです。
佐中 そういうことができる松下みたいな企業が多く登場すると、人材の流動化が進むのでしょうね。
山本 退職金については、退職手当などの収入から退職所得控除額を引いたものの1 /2が課税対象で、退職金は給与上乗せと比較してかなり有利となっています。また 、この退職所得控除額は勤続年数20年までは1年につき40万円なんですが、20年を超えると1年につき70万円となり、この点からも明らかに長期勤続に有利なシステムになっています。



<まだまだある流動化を阻止する要因>
山本 2点目は、年金制度です。最近は401K=確定拠出型年金が話題になっていますが、厚生年金を除いて、年金の積立金を通算することができません。確定拠出型年金が出て、ポータビリティが高まってくれば、この問題は解決されると思います。
佐中 転職しても年金のまま、次の会社に持っていけますからね。
山本 3点目は、企業の福利厚生の中で、住宅の占める割合が大きいことです。多くの企業では低利住宅貸付制度がありますが、これを利用している社員は転職時の借り換えに伴い、金利負担が増加してしまいます。日本では住宅に関するフリンジベネフィットが特に充実しているんです。
佐中 人材の流動化と言う点では、逆となっているわけですね。
山本 そうかもしれません。それから4点目ですが、多くの業界にあるといわれている、業界内での再就職を禁止する暗黙のルールです。
佐中 同業他社に転職するときには、退職金が出ないこともあると聞きましたけど. ..
山本 鉄鋼や建設などの大手企業間では、大手ライバル企業からの退職者は採用しない、という慣行があるようです。自分の能力を生かすのであれば、同じ業界で生きていくのが適材適所を実現するのには非常に合理的なんですが、そうすると能力のある人材を引き止めるために企業側にコストが発生するため、そのような慣行が有効になっているんですね。これが人材マーケットのり方をゆがめている結果を招いているわけです。
佐中 優秀な人材が動くことは、業界の発展につながる部分って大きいと思いますけどね。
山本 5点目は、まだ人材の流動性を阻害する要因はあって、中高年に対する求人の少なさがあります。若いうちは賃金に比較して企業への貢献が高いんですが、年齢が上がるにしたがってこれが逆転するという賃金制度が問題なんです。若年層が多い間は非常にメリットのあるシステムで、ある年齢以上になれば給料も上がる、ということで若年層を給料以上に働かせることができたわけですが、団塊の世代の年齢が上がるにしたがって、このシステムは崩壊しているのが現状です。しかし、給与システムは根本的に変わっていないため、結果的に中高年に対する求人を少なくしているというわけです。
佐中 倒産した大企業の社員の再就職でも、中高年への求人の少なさが話題になりましたね。
山本 最後は、職業紹介事業や労働者派遣事業に対する規制です。労働者派遣事業に関しては昨日までいろいろと紹介してきましたが、この2つは規制緩和の大きな対象とみなされていました。



<米国ルールで戦うために>
山本 このように日本のシステムは人材流動性を阻害する、別の言い方をすれば人材を囲い込むのに有利なものなんです。しかも、若年層が多いという、「ピラミッド型の構造を前提としてできあがっているシステム」ということができます。しかし、団塊の世代が中高年になってしまった現状では、これが実際に破綻してしまいました。 あらかじめ原理原則ではわかっていたことなんですが、これまで手が打たれなかったということで、しかも、既存の政党は多くが労働組合をバックにしているため、なかなか、雇用問題に大胆に切り込んでいくことができなかったという側面も否定できません。
佐中 われわれサラリーマンが、自分たちの問題なのに、結果的に手をつけさせなかったことになってしまったのでしょうか。
山本 しかし、日本がグローバルな競争に打ち勝っていくため、特にアメリカの資本主義のルールで戦っていくためには、人材の流動化は避けて通れません。そうでなければ、鎖国するしかないんです。そのような人材のマーケットでは、労働や付加価値に対して対価が払われるという、原理原則に基づいた雇用形態が実現されなければならないと思います。今まで、会社を信じて給料以上の働きをしてきて、そろそろ返してもらえると思ったら、突然、人材の流動化というのはないだろう、という人もいるかもしれません。でも本当は、それを信じてきたことが間違いなのであって、そういう意味で、もう一度、自分の価値を見直し、適正な価格を考えて、自らの価値を上げることを自分で考えることが必要な時代になってきたいえるのではないでしょうか。



山本さんの登場も、今回で最後となってしまいました。番組スタートから4ヶ月、様々な話題をお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか?もっと山本さんとやりたいことはあったのですが...。それは、米国留学によってさらにスキルアップして帰ってくる山本さんとやればいいわけで、心から留学を応援したいと思います。パーソナ リティをこなしつつ、自分を高めることを忘れていない山本さんに負けないように、私も頑張っていこうと思います。

(洋)

TOPページへ