山本 |
その人材派遣ビジネスに関する法律「人材派遣法」が改正となり、今年の末から施行される予定です。主なポイントは、(1)基本的な職種の自由化、(2)派遣期間を最大1年とし、それ以上の場合には社員とするように勧告するの2点です。
基本的な職種の自由化に関していえば、これまでは人材派遣が可能である職種は26業種に限定されていました。具体的には秘書、文書管理、ソフトウェア開発、研究開発、添乗、通訳、速記、書籍編集などです。背景には、基本的に人材派遣は特殊なスキルを売るという意味合いに捉えられてきたという面があります。但し、実態としては業務請負という形で対応してきた面もあるわけです。
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佐中 |
確かに派遣社員と聞くと、何か特殊な職種という印象を受けますね。 |
山本 |
これがこの改正で、「ポジティブリスト」から「ネガティブリスト」に変わったわけです。つまり、こういう業種だけ認めるという形から、こういう業種はいけないという形になりました。港湾運送、建設、警備及び政令で定める業務がNGで、これを除く全ての業種はOKと変わったわけです。したがって、営業社員も派遣でまかなうことが可能になるわけです。実際、昨年からの新聞記事を見ていると、人材派遣会社は営業職を非常に有望なマーケットとして見ているように見受けられます。 |
佐中 |
営業マンが、派遣社員なんて違和感がありますね。 |
山本 |
しかし営業職に限らず、すべての職種が人材派遣の対象となることによって、人材の流動化という意味においては、大きなものがあるわけです。産業競争力会議でも、ポイントになっています。これを自分の職種も派遣として成り立つのかという風に考えるとけっこう面白いです。本当に自分はマーケットにおいて価値があるといわれるのか、あるいは自分の職種はいろいろな企業でフレキシブルに立ち回るのが可能であるのか、それともその企業であってはじめて異化されるスキルなのかなどは、一度リスナーのみなさんも考えてみるといいと思います。 |
佐中 |
サラリーマンが社外で通用する能力を問われるなんてことは、いままでは考えられてなかったことですね。 |
山本 |
こうやって考えてみると、マーケットニーズの高い特殊なスキルは高く売れるわけです。但し、自分のスキルを高く維持するためにはそれなりの投資も必要になります。私のようなシンクタンクのコンサルタントは、まあ、人材派遣のようなものです。自分の会社の収益への寄与は結果的についてくるもので、特定でない複数の顧客に対してマネジメントの新たな切り口や問題解決策を売るわけですから、派遣社員だとしてもあまり抵抗はないです。但し、売れなくなってくると非常に厳しいものがありますけどね。 |
佐中 |
特殊なスキルは、必要とされなくなった時に、ちょっと怖いですね。 |
山本 |
そうならないようにスキルに磨きをかけ続けなくてはなりませんね。それからもうひとつのポイントが派遣期間を1年に限定するという点です。これは、これまで3年まで大丈夫だったものが、期間が短縮されています。1点目の派遣職種の拡大は、雇用不安をもたらす、という意味合いからこのような条件がつけられたわけです。これは労働組合の圧力がかなり大きかったと想像されますが、これまでの形態で、派遣に期間1年という限定をつけたのは果たして正解だったかどうかは疑問ですね。大企業もあっさりと倒産し、生き残るためのリストラを行っているいまの時代に、労働の自由化に向けての弊害になりかねません。いずれにしても、今回の派遣法の改正は、雇用形態を大きく変える可能性を秘めていると思います。産業競争力の強化に向けても、人材流動性の確保は大きな課題です。 |