『〜地震予知を考える〜地震予知の現状』

<リスクマネジメントと空振りのマネジメント>

山本 今週は、リスクマネジメントという視点で、地震予知を扱うわけなんですが、阪神大震災以降、地震予知のあり方というのは、非常に議論になったんですね。「地震予知はあまりに不確実だから止めてしまえ」とか「地震予知はいろいろな方法がある」という話がいろいろ出てきました。
佐中 そうですね。信頼性の薄さは否めないですね。
山本 日本は、地震という巨大なリスクの上に、巨大な経済を築いてきたのが現実で、地震予知には過度な期待がかかる反面、その不確実性に対しては、恐らくその期待の大きさゆえに、落胆、あるいは批判を込めたコメントが多く出てきてしまうんです。そこで、ゲストに地震防災対策強化地域判定会会長の溝上恵さんに、お越し頂きました。
溝上 よろしくお願いします。
山本 まず、地震予知の現状について教えていただけますか。
溝上 「地震予知」というコトバは、色々な捉えられ方をされているように思います。よくいわれるのは、「東海地震」「東京直下地震」などの特定の地震を見越して予測することです。ところが、「東京で大きな地震」というと直下型だけでなく、房総や茨城、東海などで起きる地震も、「大きな揺れ」であれば含まれます。そういう地震の災害も含めた予測でなく「地震度(揺れ)の予測」も、「地震予知」と考える方もいます。阪神大震災を引き起こした「活断層の地震」は、5000年に1度のもので、誤差が1500年〜2000年という、我々の人生より遥かに長いサイクルの地震です。それから東海地震に代表される「海溝型の地震」は、100年とか200年のサイクルで確実に起きる地震があります。これに関しては、現在の学術レベルでなんとか対処できる(前兆をつかむ)見通しが立っています。あとは夏になると伊東沖で起こる「群発地震」ですね。これはもう予測出来るように成りました。「地下からマグマが海底に向かって上昇してくる」群発地震の前兆を捉えることが可能になり、もう実用化出来るようになると思います。
山本 ひとくちに地震といっても様々なものがあり、地震予知ができるものもあれば、できないものもあるというわけですね。そういうことが、一般の方には伝わっていないですね。
溝上 そこがこれから研究者、防災関係者そして一般市民がお互いに理解しあわなければ成らない大切なポイントだと思います。そうしないと予知というコトバが、一人歩きして、迷走してしまいますね。本当の基本になっている内容、どういう事に力を注いで地震予知を構築していかなければならないのか、情報はどのように発信すれば的確に伝わるのかなど、地震予知の本当の姿が理解されて始めて意味のあることになると思います。



<リスクマネジメントとしての地震予知>

山本 阪神大震災以降、地震予知論が盛り上がりましたが、震災の前後で国の取り組みは何か変わりましたか?
溝上 地震予知はできる、できないという議論がマスコミなどで起こりました。中には非常に熱っぽいものもありましたが、阪神大震災から5年経った現在は、冷めてきている感があります。地震予知は、「日本列島がどのように出来てきて」「日本列島の地震はどういう性質」で、「日頃はどういう地震が起きているのか」という日本の地震の姿を長期観測し、基礎を固めないとなりません。
山本 まず科学的な取り組みが必要ということですね。
溝上 そうです。この点に関しては震災以降再認識されつつあります。心配なのは「活断層」が、安易に危険視されていることです。
山本 阪神大震災によって話題になりましたからね。活断層マップも登場しました。
溝上 あの地震はたまたま活断層による地震だった訳です。活断層が全てではなく、隠れた地震もあるので理解して欲しいですね。一般の方に知識としては普及したのですが、伝わり方があまり良くなかったと思います。
山本 地震予知をリスクマネジメントのツールとして、どのようにして扱っていくべきだと思いますか。
溝上 地震は揺れ始めたら、たった10秒程で運命が分かれてしまうものです。津波だって2〜3分後に到達することもあります。つまり、地震が起きた後に初動体制や救援について考えても、大幅に人命の損失を軽減することは出来ません。やはり事前に色々な対策を立てたいわけです。建物の耐震性強化や区画整理、火災への対応などは、絶対にやらなくてはなりません。そういう事前対策のひとつとして「地震予知」です。ただあくまでもいくつかある対策のなかのひとつとして捉え、「少しでも災害規模を小さく出来ればいい」というスタンスが必要です。全面的に予知に頼ってはいけないと思います。
佐中 対策メニューのひとつと考えるわけですね。
溝上 将来は、研究が進んで、色々な場面で予測情報を出すことが出来るようになるでしょう。ですから地震大国の日本は、早期に予知をスタートさせ、事前対策の手段として確立させるべきです。日本はそれが可能な技術を持っていると思います。



地震にこれだけの種類があることをご存じだった方は少ないのではないでしょうか。全ての地震が、同じメカニズムで発生するわけではないので、なかなか予知することが難しいということを理解して頂けたかと思います。それでも予測できる地震があるということに、希望を抱かずにはいられません。そこで溝上さんに、「東海地震は、本当にくるのでしょうか」と伺ったところ、「いつ来てもおかしくない状態。それだけの歪みは十分にある」とおっしゃっていました。できれば「地震は来ない」という予測がよかった・・・

                            (洋)

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